取材日:2021/02/10
▽なぜ国際学部に入ったのですか?
様々な理由があるのですが、簡潔に言えば、僕の家庭教師の先生が、明治学院大学の国際学部を推してくれました。その推してくれた理由で1番魅力的だったと思ったのは、「教員のすごさ」ですね。学生の皆はきっと、授業を受ける中で「あれ?国際学部の教員ってすごい人たちなんじゃないかな?」と思う機会が結構あると思うんですよね(笑)
僕自身は、高校生の時から「在日韓国人」や「朝鮮半島研究」に興味があり、明学の秋月望先生の事を知っていたので、その先生がいる大学に入りたいと思い、明学の国際学部を目指しました。
▽力を入れて取り組んでいる活動は何ですか?
僕は、学費減免を求めるインターネット署名活動を行いました。
コロナの影響で、僕はアルバイトができなくなりましたし、Wi-Fiが家に無かったので、急にオンライン授業が決定し困惑しました。僕がこんな状況なので、きっと留学生はもっと大変な状況なのではないかと考えました。
もちろん、学生だけでなく、大学側も前代未聞の状況に困惑していたと思います。しかし、オンライン授業の「大学の決定」などは学生の意見は一切取り入れられず一方的でしたし、学生が大学に「今、学生が置かれている状況」を伝える手段もありませんでした。つまり、コロナを通して、学生は「弱者」だという事が可視化されたと思います。
自分たちの通っている大学の決定権に学生が全く関わっていない事を、不思議に思いました。そして、「学生の声を届けたい。」と思い、インターネット署名を始めました。
署名自体には法的拘束力などは無いので、「インターネット署名って意味があるのかな?」と始めは思っていましたが、「大学に自分たちの声を見える形で伝えたい。」と思い活動を始めました。結果的に、大学が連合して「国が補償してください」という意見書を国会に提出するほど大きな問題として取り上げられましたし、学生自体が「大学の在り方」について考える機会になったので、良かったかなと思いました。
この活動で大切だったのは、国際学部との関わりです。活動を始めた時、国際学部の教授に「署名活動を始めたので、シェアしてください。」とメールを送りました。それに対して、秋月望先生は「当然の要求だ。」とFacebookにシェアしてくださいましたし、竹尾茂樹先生は「活動を進めるためには、対策を練らなければいけないよ。」と相談に乗ってくださいました。
また、阿部浩己先生は「素晴らしいイニシアティブです。この活動を明治学院の理事会に持って行きます。」と明治学院大学の理事会でシェアしてくださいました。僕たちが署名活動を始める前から、教員の方々は「学生のために何かしなければいけない。」というお話が出ていたようですが、やはり学生からの要望はとても重要だったようです。
慣れないオンライン授業の後にパソコンと向き合って署名活動をする事や、日々状況が変わる中でスピード感を持って活動する事などが大変でした。ですが、僕は仲間と相談しながら活動出来たので、無理なく活動し続けられました。また、この活動をきっかけに現在は、学生自治会を発足のために活動しています。

“Change.org”の署名ページ
▽活動は国際学部での学びや経験とどのように繋がっていますか?
「平和研究の基礎」という、国際学科の1年生が全員必修で受ける授業から大きな影響を受けました。
僕の国(大韓民国)は、今でも戦争をしている(休戦中)の国なので、「戦争が無い事が平和だ」と考えていました。けど、授業を受けて、そもそも「戦争の原因」になる貧困などに注目する重要性を考えるようになりました。
なので、もし僕が明治学院大学国際学部じゃなかったら、「平和的な行動で、平和を求める」という署名を集める活動の中心には居なかったと思います。
僕たちの活動は様々なメディアに取り上げていただきました。数多くの大学が同じような活動をしていた中で、僕たちに注目が集まったのは1番早く2000人の署名を集めたからです。
僕は、「署名を始めた僕がすごい」なんて思っていません。僕が始めた活動を「大きな活動にしてくれた参加者の皆さんがすごい」と誇りに思っています。この活動に参加してくださった皆さんは、コロナ禍で起きた問題に対して当事者意識を持ち、署名活動を「正しい主張だ」と瞬時に判断し拡散してくれました。もちろん、国際学部以外の学生や卒業生の方もいましたが、特に国際学部生に注目すると、国際学部で学んだ「声を上げる大切さ」を誰よりも理解していたからではないでしょうか。

佐久間亮 2020/4/27「コロナ 広がる学費署名/背景に貧しい高等教育予算」『しんぶん赤旗』

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▽活動がコロナによって変わった事は何ですか?
僕は去年(2020年)の春頃は、「コロナによって全てを奪われてしまった。」と思っていました。例えば、大学の授業で『主戦場』(2019)という映画を見てほしいと思い、先生方や明治学院大学国際平和研究所(PRIME)の方々に協力していただいていました。配給会社から案件を買う直前まで話は進んでいて、監督を呼ぶ事も計画していましたが、コロナによって話の全てが無くなってしまいました。
けれども、署名活動など様々な活動をする中で、「コロナによって新しいチャンスが生まれている。」と思うようになりました。リモートによって、コミュニケーションを取る方法が変わり、時間も物理的距離も気にせず交流できるようになりました。コロナや署名活動が無ければ、きっと関わる事が無かった卒業生の方とお話する機会も生まれました。
そのため、この1年は「人生の転換点」になったなと思っています。
▽「私にとっての国際学部」とは
一概には言えないのですが…。「立ち止まって考え直す場所」ですかね。先生方、友達、卒業生など、多くの人の考え方に影響を受けたので、僕の人生や考え方を大きく変えた場所だと思います。
署名活動の時をはじめ、悩んだり戸惑ったりした時は、国際学部で学んだ事を思い出して、「今の自分の行動は“正しい”のか。」と自身を振り返ります。そして、この学びは、自分が間違っていたら立ち止まるや勇気や、正しかったら前に進むための原動力になっています。
▽学生や高校生へのメッセージ
これから社会で求められる能力は世界の流れに敏感に反応し、良い社会を作るための行動力だと思ってます。その能力を養う上で、国際学部は高いイニシアティブを持っています。
この1年は、“Black Lives Matter”や“Don’t Be Silent”などを通じて、社会問題を解決するために、多くの人が行動し続けなければならないと実感したと思います。一人一人が行動する事も大切ですが、それだけでなく、社会問題が起こる根底にある「社会構造」の変化を求めなければいけないと思います。
国際学部で学ぶ事は、「社会構造を変化させるための舵取り」になると思います。そのような、社会構造に向き合える環境は貴重だと思うので、その環境を活用し、自分の物にしてほしいなと思います。社会、世界を動かす為の知識を学べる場所だと思うので、ぜひ国際学部で学び世界を変えていって欲しいです。
〇金勇利
1997年生まれ。2017年に明治学院大学国際学部国際学科に入学し、孫ゼミに所属。コロナ禍において、学費減免を求めるインターネット署名活動を行う。