【研究内容紹介】大岩圭之助先生

取材日:2020/12/07

▽現在の研究内容は何ですか?

 様々なことを研究していますが一つの大きなテーマとして「あいだ」の研究をやっています。現在の世界は基本的に「分離の思想」に基づいていると思っています。ぼくたちが生きてきた分離の時代を、「あいだ」が損なわれ、失われてきた時代として捉えます。何かと何かの「あいだ」、人の人との「あいだ」、人と自然の「あいだ」・・・。それらの「あいだ」にあったはずの「つながり」や「関係性」をもう一度、根本から考え直してみることがこの研究のテーマです。

 ぼくの専門は文化人類学と環境問題です。学問的な研究もやりながら、他方で環境問題に関するアクティビストとして活動してきました。ぼくが明治学院大学で教え始めた1992年以来からは、文化・社会の領域と、自然・環境・生態系の領域の二つの領域にまたがって考え、書き、教え、行動してきたつもりです。

▽研究分野の魅力は何ですか?

 文化人類学というのは、ぼくたちが当たり前だと思っている物事を、見直し、揺さぶる「アンラーニング」の学問です。というのも、文化人類学はもともと自分にとっての異文化、他の社会の人々の生き方、それを支えている価値観や世界観について研究する分野です。

 普段自分たちがやっているようには行動しないし、自分たちが考えるようには考えない、ぼくたちの文化で良いとされていることが良いと思われていなかったり、自分が醜いと思っているものが美しいとされていたり・・・。でも、それら多くの違いにも関わらず、あるところでは、とても共感できたり・・・。そうした経験を通じて自分が「揺さぶられる」わけです。

 文化人類学は単に知らない文化について勉強することではないのです。学ぶことで自分自身について再考せざるを得なくなるのです。また、異文化同士の出会いは自分ばかりはなく、相手の側にも学びを引き起こすでしょう。そういう意味でとてもエキサイティングだと思います。

▽研究を志すようになったきっかけは何ですか?

 ぼくは若い時に日本の社会に強い違和感を持っていました。「こんなとこで一生暮らすのは嫌だな」と。だから、とにかく海外に行って暮らしたいと。しかし当時は海外に行くことが簡単ではなかった。働いて、お金を貯めてアメリカに行きました。

 なぜアメリカかというと、幼い頃からアメリカの黒人音楽が音楽に惹かれていて、アメリカの黒人やインディアン(先住民)に興味をもっていたのと、ベトナム戦争の反対運動に参加していたので、その戦争をやった国に行ってみたいと思ったんです。

 帰る予定はありませんでした。行った先で様々な出会いを通じて、先ほど言ったような揺さぶられる経験をしました。アメリカでは黒人、のちに移り住んだカナダではインディアンの住んでいる場所に出入りし、多くの人に出会い、いろんなことを学んでいました。それがやがて文化人類学をやることへと繋がったのだと思います。

▽今後の研究目標は何ですか?

 それはもういろいろあって困るくらいですが、まずはやりかけていることを続けたい。ぼくはもう15年以上、ブータンとタイ北部のカレン族のところに通っていて、校外実習で何度も訪れていますが、ぼく自身の研究はまだやりかけです。

 また黒人やアメリカ先住民についてもう一度研究したい気持ちもあります。日本人はアメリカに戦争で負けた後、180度転換して、アメリカの後を追いかけてきました。自分や自分の世代が大きな影響を受けてきたアメリカという文明をしっかり読み解いて、深く理解したいという気持ちがまだまだあります。

 子どもの頃から、ぼくの興味の持ち方は主流の社会そのものよりも、その社会が生み出す少数者の社会なのです。マイノリティについてより深く知ることで、主流の社会も見えてきます。ぼくはそういうアプローチを今までとってきたし、これからもそれを自分のスタイルとしてやっていくつもりです。

▽学部生の頃の様子を教えてください。

 日本にいた若い時、どちらかと言えばぼくは不良でした。しかしアメリカに渡航して、二十五歳で大学一年生になってからは、自分で働きながら真面目に勉強した。勉強そのものが好きというより、学生としてのライフスタイルが大好きで、せっかくとった学生ビザを維持するために、一生懸命働き、勉強していた。いつもサボっている高校の頃のぼくを知っている人がぼくの姿を見たら多分びっくりしたと思う。

 よく勉強し、働いたけど、よく遊びました。ラグビーやったり、空手をやったり、パーティも自分でたくさん主催しました。大学時代をこんなに楽しんだので、後に日本の大学で教え始めた時に、つまらなそうな学生が多いのがショックでした。

▽学部生の間に読むべきオススメの1冊は何ですか?

 ゼミの校外実習で学生たちとイギリスのシューマッハー・カレッジに滞在し、そこで学生たちが授業や生活など全てを記録し、その記録を元に書いた本があります。著者はぼくになっていますが、本当はぼくと学生たちで書いた本です。講談社から出ている本で、『英国シューマッハー校 サティシュ先生の最高の人生をつくる授業』という本です。これを読んで、学生のみなさんが大学時代をいかに過ごすかで、今後の人生が大きく変わりうるということをぜひ知ってほしいと思います。

〇大岩 圭之助(おおいわ けいのすけ)国際学部名誉教授

ペンネーム:辻信一

エコロジー/スロソフィー/GNH/エクアドル、ブータン、米国黒人、カナダ先住民

コーネル大学博士課程修了。人類学博士。1991年10月明治学院大学国際学部着任。

著書に『スロー・イズ・ビューティフル』、映像作品に『アジアの叡智』DVDシリーズ(現在9巻)など。

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