【研究内容紹介】 奥村恵子先生

取材日 2021/5/19

▼現在の研究分野は何ですか?

 私は主に「日本語を背景に持つ子どもの日本語教育」と「介護の専門日本語教育」を研究しています。日本語を背景に持つとは、人生の中で日本語と関わりがある、ということです。例えば、海外に移住した日本人の子どもたちや、国際結婚家庭の子どもたち、海外から日本に来て日本語で生活するようになった子どもたちなどです。何らかの形で日本語に関わっていく必要があるけれども、日本の学校で行われているものと全く同じ学習内容では合わないといった子どもたちのための言語教育を研究してきました。また、介護の専門日本語教育では、日本で介護職を目指している外国人に対する言語教育を扱っています。

▼この研究を志した理由は何ですか?

 以前、夫の転勤や留学に伴って、家族と海外で暮らしていました。現地校に通う自身の子どもには自分なりに工夫して日本語を教えていたのですが、帰国後に入学したインターナショナルスクールでいきなり日本の学校で使う国語の教科書を渡されてびっくりしたんです。その現状に疑問を持ったことが今のキャリアのきっかけです。子どもたちは、今までとは違う言語を学ぶ環境へ自ら来たわけではありません。周りの大人の影響でそうなったのですから、彼ら彼女らをサポートするべきなのも大人たちです。日本語学習に悩みを持っている子どもたちをサポートすることで、日本語を勉強したり使ったりすることによいイメージをもってもらえればな、と思っています。

▼研究分野の魅力は何ですか?

 言語の研究といえども、基本は教育実践です。学習者を調査対象として遠くから見るのではなく、自分もその実践の中で一緒に成長していき、彼ら彼女らのニーズをつかんでいくことの繰り返しです。その中で、学習者が日本語学習の意義を見出し、主体的に学び始めてくれるようになることが最大の喜びです。これこそが教育実践研究の魅力だと思います。

▼今後の研究目標は何ですか?

 日本語を背景に持つ人たちには、これまでコツコツと積み重ねてきた日本語学習を将来のキャリアにつなげていってほしいと思っています。今はいかに日本語を学習してもらうかを扱っていますが、学んだその日本語をその後の人生にどう生かすのかが、今の研究の先にあるものだと思っています。実は、海外に行っても日本語が使えることはとても大きなアドバンテージです。日本人や日本語を対象とした仕事においては戦力となりますからね。このことは、私の経験からも言えます。

▼学生時代はどのような学生でしたか?

 私が学生の頃はいわゆる「バブル時代」でしたので、みんなけっこう派手な服を着ていましたね。先日、押し入れの整理をしていたらその頃の服が出てきてびっくりしました。同時に大量の大学授業ノートも出てきて、その中に「物事を多角的に見ろ!」というメモが書いてありました。一つの基準に当てはめるのではなく、相手のことを考えて様々な角度からものごとを捉えるというマインドセットが若い頃からあったのだと思います。実は、はじめから教員志望だったわけではなく、子どものころからずっと、「結婚して子どもを持つことが唯一の目標だ」と思っていたんです。でも、結婚後の海外での生活を通して、日本語教育にもっと多様性があってよいのではないかと思うようになり、自分が現状を打破してやるんだという気になったのは、学生時代からの信念がそうさせたのだと今では考えています。

▼学部中に読むべき本は、どういった本ですか?

 自分の信念を後押ししてくれる本を読むことで、自信や勇気が持てる機会になればいいと思っています。そのような本に大学で出会えれば素敵ですね。ですから、特にこの一冊というものはありませんし、みんなそれぞれのものがあって当然です。それから、読書はとても大切ですが、それと同時に実践も重要です。学生の皆さんにはインプットだけでなく、どんどん色んな体験をしてもらいたいですね。

〇奥村 恵子 国際キャリア学科助教

日本語教育、日本語を背景に持つ子どもの言語教育、介護の専門日本語

早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了(日本語教育学修士)、早稲田大学大学院日本語教育研究科博士後期課程(満期退学)、早稲田大学日本語教育研究センター(インストラクター非常勤)、モナシュ大学、メルボルン大学、東京都立大学、流通経済大学(非常勤講師)を経て現職

                                    

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