【私にとっての国際学部】02ks 小口広太さん

▼なぜ国際学部を選びましたか?

 私は長野県塩尻市出身で、初めは大学に進学するかどうかも迷っている状況でした。しかし、親と相談する中で東京に出たほうがいいという結果になり、東京の大学を受験することを決めました。明治学院大学には、1年浪人して2002年に入学しました。国際学部に興味を持ったきっかけは、2001年の9月に起きた同時多発テロです。もともと世界史が好きだったので、なぜこのようなことが起きたのか疑問にもち国際学部的な学びに興味を持ちました。

当時、国際学部がある大学は多くありませんでした。そんな中で、国際的な学びができる明治学院大学が目にとまりました。

 第1志望ではない大学でしたが、入ってみると今の仕事にもつながるような価値観が変わる先生に出会えました。最初に国際学部に興味を持ったきっかけは、平和問題でしたが、勝俣先生に出会って暮らしや食べ物を生産する農業に改めて目を向けるきっかけになったと思います。

▼学生時代はどのような活動をされていましたか?

 サークルや部活動には所属していませんでしたが、フレッシャーズキャンプの副代表や国際平和研究所でのアルバイトなど、色々な活動を行いました。その中でも特にのめり込んだのがゼミです。私は、勝俣誠先生のゼミに所属し、南北問題やアフリカの食料問題などについて学びました。先生の授業はとても面白く、南の国がどう発展していくかということより、北の国の人びとがどう暮らすかに焦点を当てた発想に興味を持ちました。

 ゼミでは月に1回程度、週末に埼玉県の山村にある勝俣先生の別宅で合宿がありました。そこでは、本を読んで発表会をするだけではなく、土地の開墾や畑作業、採れた野菜で料理、薪割りなど、実際に自分たちの手で様々なものをつくり上げました。私の実家は農家なのですが、農村の人たちはあまり農業に対して良いイメージを持ってないと感じていました。先生のような都会の人が農家的な生活をしているのを見て、都会の人の方が農業をポジティブに捉えている面白さを感じたと同時に、農業について見つめ直すきっかけになりました。

 また、校外実習で訪問した西アフリカのセネガルでの生活も印象に残っています。2週間の実習では、農村や漁村などを歩き現地の人にインタビューをしてまわりました。インタビューをしていると、現地の人からも日本について質問されるのですが、私はうまく答えることができませんでした。その時、他の国のことばかりを知ろうとして日本について知らなかったことに気づき、反省しました。これをきっかけに、日本の農業について勉強し始め結果的に卒論もこのテーマで書きました。

▼どのように現在のキャリアに至りましたか?

  やはり、勝俣先生との出会いが大きく関係しています。先生から学ぶうちに、「人の人生を変える人になりたい」と思うようになりました。特に、大学は中学や高校より具体的に、人生を考える中で大きく影響を与える期間だと考えています。

大学で学んできた日本の農業のことについてもっと知りたいという思いと、サラリーマンとは違った大学の先生ならではの自由な環境の中で学生と関わりがら仕事ができる面白さから、大学院に進むことを決めました。

 現在の専門である有機農業と出会ったのは、勝俣先生に誘われて訪れた埼玉県小川町です。小川町では、若い人が農業を学んでいて、実家は農家ではないけれど将来は農業をやりたいと考えている人がたくさんくいました。農村出身の若い人が農業を継がないように、私自身も農業をやっていません。しかし、有機農業を行う小川町には、農業を仕事にしたいと思う若い人たちがたくさんいることに、とても衝撃を受けました。そこで、若者の気持ちを動かす有機農業について興味を持ち、大学院では有機農業に焦点を絞って研究をしていくことにしました。

 有機農業を学ぶ中で現場を知ることが必要であると考え、修士2年に上がるタイミングで一度休学し、小川町の有機農家にお世話になって1年間住み込みで勉強しました。 

 修士課程までは国際学部で進学しましたが、農業や農村を専門にする先生がいなかったことから、博士課程は明治大学の農学部に進みました。

▼今までのキャリアの魅力や大変なこと何ですか?

  学生が地域の課題や社会の課題を自分事として捉え、解決するために活動している姿を見られることです。私は座学だけでなく、地域を巻き込んだプロジェクトや、アクティブラーニングを中心に行っています。このような取り組みに学生が主体的に関わって、それを通じて学びを自分のものとしていく姿を見ているのがすごく楽しいです。

 また大変なこともこのようなプロジェクトに関わることです。私は、大学生が学生としての特権を持っているとはいえ、社会人であると考えています。そのため、今の社会をどう生きるかを学生時代に考える必要があると思います。そのきっかけとして、地域の問題解決に学生も主体的に取り組むプロジェクトを立て、当事者として地域の人たちと同じ目線で考える学びを進めています。

特に今はオンライン授業が広がったり、大学に来る意味が問われている時代だと考えています。実際に経験を通じて学ぶ機会が減っている現在の状況の中で、学生時代に社会について考える機会をつくることが教員の課題だと考えています

▼実際に行っているプロジェクトにはどのようなものがありますか

 今所属している千葉商科大学人間社会学部では様々なプロジェクトがありますが、特に力を入れているのはマルシュの運営です。千葉商科大学は千葉県の市川市にあります。市川市には、地方卸売市場があります。そこの駐車場で地域の特産品や農産物をはじめとして、全国から色んなものを集めたマルシュを月に2回開催しています。マルシュは地域の人たちと連携して、大学の学生が企画と運営を行っています。

 他にも、大学内で育てたぶどうを使ったワインの商品化や、大学の中で食品や日用品を学生と分かち合うフードパントリーの実施を進めています。

▼社会人になるための覚悟

  学びに対する姿勢はとても重要だと思います。今の大学生を見ていると、就職活動が学生生活の大部分を占めてしまっていると感じます。私はそれがすごく寂しいと感じていて、せっかく4年間学ぶことを選んだのであれば4年間学びを全うして欲しいと思います。今は早いと3年生の冬に就職が決まる人もいますが、就活が終わると大学生活がもう終わりだと考える人もいると思います。しかし私は、「学ぶ」ということは社会に出てからより重要になると思っていて、大学の学びが生かされるのは社会に出てからだいぶ経った後だとも思っています。友人と話していても、社会に出てから「あの授業の内容、今知りたかった」と思うことがよくあります。30 歳ぐらいになってこれからの人生について考えた時、「そういえば先生こんなこと言っていたな」という風に思い返せるような学びをしてほしいと思います。

▼あなたにとっての国際学部とは?

 考え方や人生の軸を得た場所です。国際学部で出会った色々な考え方や人たちは、今でも仕事に生かされていると感じています。実際に、現在も連絡を取り合って気にかけてくださる先生もいます。未だに連絡を取ってくださる先生がいるのは、教員と学生の距離がすごく近い国際学部ならではですし、とても嬉しく思っています。国際学部での時間は、今の自分の考え方や人生に大きく影響する4年間だったと思います。

▼学生へのメッセージ

 国際学部に入学する学生は、どちらかといえば「海外のことを学ぶ」など外を見て入ってくる人が多いと思います。しかし、やっぱり国際学部だからこそ日本のこと、自分の住んでいる地域のことや大学がある戸塚のことも学びながら、世界を見てもらいたいです。例えば、舞岡公園で行われている稲作など、こうした足元にある活動も、実は今の飢餓や貧困、不平等問題やジェンダー問題などの国際学部的な学びとすごくリンクしてつながっている部分がたくさんあると思います。

自分の足元と世界がつながるような学びをしていってもらいたいと思います。

〇小口広太

2002年に明治学院大学に入学。卒業後、明治大学大学院農学研究科博士課程に進む。現在は、千葉商科大学人間社会学部で教鞭をとる。専門は地域社会学、食と農の社会学。有機農業や都市農業の動向に着目し、フィールドワークに取り組んでいる。 

 

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