【研究内容紹介】賴俊輔先生

▽現在の研究分野は何ですか?

 専門は東南アジア(主にインドネシア)経済です。グローバル化によってヒト、モノ、カネが国境を越えるようになったことが東南アジアをはじめとした開発途上国の経済にどう影響しているかに関心があります。この問題意識のもとで、下記の3つの領域の研究をしてきました。

 一つ目は、一次産品と途上国の関係について。例えば、世界で最も多く消費されている植物油脂であるパーム油は、インドネシアが世界最大の生産国ですが、そのパーム油のプランテーションがインドネシアの経済や地域社会、環境、地域の人の人権にどう影響を及ぼしているかということをこれまで研究してきました。

 二つ目は、水道事業の民営化について。20世紀の終わり頃から最近まで、途上国の大都市の水道供給が民営化される事例が出てきました。日本では、例えば横浜市の水道だったら横浜市水道局、神奈川県だったら県営水道が水道を供給していますが、途上国ではそういった水道公社の運営がうまくいかず、民間企業に水道業務を委託するようになったわけです。

 しかし、実態はどうであったかというと、都市によって結果が異なるものの、多くの都市において水道料金が高騰したり、水質が改善しなかったり、民間事業体が情報公開しなかったりといった問題が生まれています。

 こうした問題を受けて、ここ最近の新しい動きでは、世界の水道は再公営化の方向に進んでいるようです。今年、日本でも水道法が改正されて、民営化を進めやすくなったと言われており、今後の動向に注目しています。

 三つ目は、グローバル化と途上国政府の経済政策の関係について。途上国政府は、税収不足を補うために、国債を発行し、海外の投資家から資金を借りているのが一般的です。海外の投資家は、途上国の経済が不安定化し、貸した資金が返ってこないことを心配するので、その国のマクロ経済に影響を与える政府の財政状況を注視しています。

 慢性的な資金不足の途上国政府は、海外の投資家の意向を無視できず、財政支出を切り詰めることになりますが、それが、社会的弱者の必要とするニーズ、たとえば、条件不利地域の住民のための道路建設、教育部門への支出、医療費や失業手当などの社会保障支出に、どのような影響を与えているか、について研究しています。

▽研究分野の魅力は何ですか?

 現代ではヒトとモノとカネが世界中を動きまわっています。日本社会でも、世界各国から留学やビジネス、観光で滞在する外国人が増えています。グローバル化のおかげで様々な人と交流し、アイディアを交換でき、異なる宗教や文化背景を持つ人と接することで新しい生き方を見いだすことができるようになりました。それはすごく望ましいことです。

しかし、「どういう風にグローバル化が進められているのか」という側面を意外と我々は見落としがちではないでしょうか。経済のグローバル化は、ヒト、モノ、カネのうち、カネ(資本)を増殖させることを何よりも優先し、それを実現するために、ヒトやモノを動かす傾向があるようです。

 経済のグローバル化を考えることは、目に見えづらい、雲をつかむような話に聞こえるかもしれませんが、現代社会の抱えている問題を知り、新しい社会を構想するうえで欠かせない作業です。

▽なぜ途上国に興味を持ったのですか?

私が高校生だった1990年代はじめは、地球温暖化や資源の枯渇などの地球環境問題への対応が叫ばれ始めた頃でした。熱帯雨林の消失による希少種の減少や地域の生態系の喪失などの問題が起きていたのが途上国だったので、関心が芽生えました。

 また、ちょうど日本ではバブル経済が崩壊して、それまでの成長重視の生き方・働き方への反省がでてきたところでしたから、日本社会が失ったものを途上国社会に見いだそうとしていたのだと思います。