“カーシェアリング”ってなに?〜横浜市戸塚区での実施可能性とシェアリングエコノミー〜

 明治学院大学のキャンパスが、『進学ブランド力調査2017』の「高校生に聞いた大学ブランドランキング」の「キャンパスがきれいである」という項目で関東エリア9位に入るほどの評価を受けていることをご存じだろうか。環境研究に携わる者として、横浜キャンパスで教えられることに喜びを感じている。一方で、戸塚駅から横浜キャンパスまでのアクセスを改善することが、長年の課題であるらしい。

 着任1年目なので問題を把握しきれていない面が多いと思うが、雨の日にバスの到着を待って長蛇の列ができてしまうことは大きな問題なのではないかと感じている。特に秋学期に、寒空の下、濡れながらバスを待つ姿を無くすことができれば、アクセスに関する学生の不満はかなり改善されるのではないだろうか。

 普段は徒歩で学校の行き来をしている学生が、雨の日だけバスを使うことも長蛇の列ができる一因だと考えられる。この雨天時のバス利用の需要増になんらかの形で対応できれば、バス停を新たに増設したりバスを増便したりして多額の費用を要せずに済む。

 法律的な問題など、実際に検討を始めないと実現に向けてどのようなハードルがあるのかは不明だが、理論的にはカーシェアリングが有効なのではないかと考えている。カーシェアリングとは現在急速に広がりつつある共有型経済の一つで、登録した複数の会員が自動車を共同利用するシステムのことである。会員は、専用のアプリを使ってその時に利用可能な自動車の情報を知り、利用することができる。

 共有型経済では、モノを所有することよりも、サービスにアクセスできることが重要になる。自動車の場合で言うと、自家用車を持つことよりも、自分が必要な時だけ自動車を使って移動できることが重要になる。これまでの経済では、自動車を所有することが一種のステータスになっていたが、共有型経済では自分の所有物ではない自動車を多人数でシェアして利用することになる。

 カーシェアリングの優れている点は、きわめて稼働率の低い自動車を有効に利用できる点にある。一般に、自動車は所有している人が利用するとき以外には、駐車場でスペースを占領している邪魔者になってしまう。稼働率をあげ、資源を有効に活用していこうというのが、カーシェアリング利用の狙いになる。横浜キャンパス周辺でカーシェアリングが実現すれば、バスで移動するだけでなく、自動車でも移動できるようになるため、雨の日に増加するバス利用の需要をカットすることができ、待ち時間を減らすことができる。

 カーシェアリングの実施方法はさまざまで、横浜キャンパス周辺で取り入れる場合、どのような形が最も望ましいのかを関係者で協議していく必要があるが、誰が運転するのか、誰が利用できるのか、運賃をどの程度に設定するのかといったことなどを考える必要がある。

 運転手については、戸塚周辺で自家用車を持っていて、学生の交通需要が高まる時間帯に車を出すことができる人がよいだろう。明治学院大学がカーシェアリング用の自動車を用意し、学生自身で運転するという方法もありうるが、免許を持たない学生はサービスを利用できないし、運転歴が短いことから事故の可能性も高い。

 また、休眠資源の活用という意味でも、戸塚周辺の自家用車を使うことが望ましい。戸塚周辺にも自動車を所有している人々が多くいるが、自分たちが移動するとき以外には使用されない。有効に活用されず地域に眠っている資源を、問題解決のために利用できる。

 くわえて、自動車を出してもらう地元の住民にとってもメリットがある。というのは、稼働していない自家用車を運転し学生を運ぶことで、運賃を得ることができるからである。

 利用者は学生と教職員に限定し、横浜キャンパスと戸塚駅の間の移動にしか利用できないようにすべきだろう。というのは、誰もが利用できて、どこからどこへでも移動できるほうが便利ではあるが、その場合、タクシーの需要とバッティングしてしまうからである。カーシェアリングアプリの配布を明治学院大学関係者に限定するとともに、運転手を登録制にすることで、トラブルの発生を抑えることができる。

 運賃は片道500円から600円程度だろうか。戸塚駅から横浜キャンパスまでタクシーを利用して通学する学生はほとんどいないだろう。タクシー利用時の運賃と同程度では学生はカーシェアリングの自動車を利用しない。

 一方で、バス運賃以下にしてしまうと、バスの利用者が急減してしまう。3名集まって利用したときのみ、一人当たりの支払額がバス運賃を下回る程度がよいのではないかと思われる。重要なのは、運転手、学生の双方にメリットを付与しつつ、タクシー会社やバス会社にデメリットを与えないように配慮することである。

 戸塚駅周辺でのみの取り組みとなることから、将来的には地域通貨での支払いを可能にすることも考えられる。このカーシェアリングのもう一つのテーマは、大学が地域社会にどのように関わっていけるのかということである。

 地域に居住する運転手に経済的なメリットがあるというだけでなく、通学中に運転手が学生とコミュニケーションできるというのも、地域社会との関わりという面では意味がある。車内のたわいもない会話から、学生が地域の問題を知ったり、地域とのつながりをもつきっかけを得たりできるかもしれない。

 カーシェアリングの需要が学生側にどの程度あるのか、需要に対応できるだけの運転手・自動車を確保できる見込みがあるのか、地域社会の要望にはどのようなものがあるのか、バス会社の意向はどのようなものかなど、課題を出し、話し合いながら進めていく必要がある。その中で、アプリをどのようなものに設計するのかも決まってくる。

 緑豊かで評価の高いキャンパスを活かしつつ、地域社会と連携しながら、利便性を少しでも高める方法を学生も関わりながら考えていくことができるのではないだろうか。

〇林 公則先生(はやし きみのり)国際学科准教授

公害・環境問題と経済活動/軍事環境問題

高崎経済大学経済学部経済学科卒業。一橋大学経済学研究科応用経済専攻修士課程、博士課程修了。経済学博士。早稲田大学アジア太平洋研究科日本学術振興会特別研究員や一橋大学経済学研究科特任講師を経て2018年から明治学院大学国際学部国際学科。

著書には『新・贈与論』や『軍事環境問題の政治経済学』など。