【研究内容紹介】熊倉正修先生

▽学部生時代はどんな学生でしたか?

 いまはこうして偉そうなことを語っていますが、正直のところ、私はおよそ真面目な学生ではありませんでした。私の学生時代は「大学生は遊んでいてよい」という雰囲気が現在よりずっと強かったですし、一年浪人してようやく大学に入ったので、のんびり羽を伸ばしたいと思っていました。実際、最初の一年間は授業にほとんど出席せず、サークルの部室に出入りしたり、街を徘徊したり、要するに何の計画性もない毎日を送っていました。

 しかし、一年生の末ごろだったと思いますが、何もしないうちに大学生活が終わってしまうことがだんだん不安になってきました。それでも大学の授業に真面目に出席する気にはなれませんでしたが、受験のときに英語が好きだったことを思い出し、自分で少しずつ勉強するようになりました。

 そうして勉強しはじめてすぐに気づいたのは、外国語を身に着けるのは一般に考えらえているよりずっと大変で時間がかかる、ということでした。そしてせっかくだから卒業までにできるだけ能力を高めたいと考え、だんだんそれにかける時間が増えてゆきました。大学時代後半は英語漬けという感じで生活していましたが、その分、他にはほとんどまとまったことができませんでした。

▽学生の間に読むべきおススメの一冊は何ですか?

 私はこの質問が苦手です。人によって役に立つ本や感銘を受ける本は異なるので、誰にでも強く勧める本はありません。私自身に関しても、20代のときにはピンと来なかったけれど、今は非常に面白いと思う本もあります。ですから他人に薦めてもらおうとせずに、自ら本屋や図書館に出向き、自分の血肉になる本を探してもらいたいと思います。大学時代に読んだ本の中で、将来引っ越しても結婚しても肌身離さず持っておきたいと思う本が二~三冊はないとちょっと寂しい気がします。
 これだけだと突き放したような感じになってしまうので、もう少しだけ付け足しましょう。いま、私の目の前に伊藤真という人が書いた『続ける力―仕事・勉強で成功する王道』(幻冬舎、2008年)という本があります。伊藤真さんは有名な司法試験の予備校の主催者で、最近は憲法改正などの社会問題に関しても積極的に発言されています。

 この本は資格試験の合格を目指す人を対象とした勉強の指南書でもありますが、より一般的な勉強のしかた、生き方についての本でもあります。司法試験のように難易度が高い試験に合格するためには、何年もの勉強と努力の積み重ねが必要です。また、ただやみくもに努力するだけでなく、最短距離で目標を達成するためにはどうしたらよいか考え、勉強方法を絶えずバージョンアップしてゆく必要があります。そうした過程を経て試験に合格した人は、資格や自信を得るだけでなく、自分で計画を立てて何かを成し遂げるノウハウを身に着けています。

 国際学部の「売り」は「いろいろなことを学べる」ことですが、いろいろなことを少しずつかじっただけでは大した自信にはならず、他人の評価も得られないでしょう。しかし大学時代の四年間を何か一つのことに打ち込めば、必ず大きな成果が得られるはずです。ただしそのためには他のことを犠牲にしてでも本気で取り組む必要があります。

 先ほど言ったように、私は大学時代の後半を英語の勉強に費やしました。在学中に英検1級などの資格も一通り取得しましたが、卒業までに自分で望んだところまで能力が伸びず、不完全燃焼感を抱えたままで社会に出ることになってしまいました。私は大学一年生のときに目的なく遊び暮らしていたことを現在でも後悔しています。

 大学の先生は、しばしば新入生に「いろいろなことに挑戦して下さい」と言います。まだやりたいことが見つかっていない人は「いろいろなことに挑戦して」打ち込めるものを見つけることが先決ですが、やりたいことを探しているうちに卒業してしまった、というのではあまりよくないと思います。国際学部は自由な分、そうした結果に終わる可能性と常に隣り合わせです。皆さんにはそうした自覚をもって毎日を過ごしてほしいと思います。

(取材日:2019/01/29)

〇熊倉 正修( くまくら まさなが)国際学科教授
国際金融論、比較政治経済論、日本の経済・社会
東京大学文学部言語学卒業後、農林中央金庫に入庫。その後、アジア経済研究所開発スク
ール、ロンドン大学東洋アフリカ学院大学院などを経て、ケンブリッジ大学で博士号取得
(経済学)。大阪市立大学、駒澤大学を経て、2017年から明治学院大学国際学部国際学科
教授。
著書に『国際日本経済論-グローバル化と日本の針路-』や『入門・現代日本経済論-グ
ローバル化と国際比較-』、『日本のマクロ経済政策-未熟な民主政治の帰結-』(近刊
)など。

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