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概要 変化する社会的状況に対応して適切な法的解決を実現していくためには、法の適用における法創造の役割が非常に重要となっている。従来の法学研究および法学教育は、法の創造的適用に必ずしも役立ってこなかった。故に、創造的能力を備えた法律家の育成が急務である。本研究は、法適用においてより良い法を創造する原理と方法の科学的解明を通して、我が国における新しい法創造教育方法を開発する。この研究目的は、次の四つの分担研究課題によって実現される。 1.法創造基礎の理論的解明 法創造とは、問題解決のために適切な法を新たに創り出すことである。すなわち、ハードケースの解決や法規と事実のギャップを埋めるために、法創造が必要である。法適用における推論は、「法的正当化の推論」と「法創造の推論」から成り立っている。出来事−事件を法的に解決するための法規が見つけられ、その適用結果として法的決定が創設されるが、これを正当化するために、具体的事実と抽象的法規の間のギャップを埋める解釈法が創設される。この仮説ルールの生成・検証のために、正義・公平判断の機能を論理分析し、経済学・進化ゲーム論の立場から、仮説の妥当性を評価するための理論を構築する。 2.実務と教育における法創造の実際の解明 大陸法における法解釈の事例分析を行うとともに、米国のロースクールでのプロブレム・メソッドとケース・メソッド、ソクラティック・メソッドとディスカッション・メソッドの教育事例を分析し、両者を比較することにより、法創造推論の構造を解明する。さらに、契約書作成に至る実務の事例分析により、契約という法の創造過程を解明する。 3.法創造教育方法の開発 上記の4つのメソッドを法創造教育のために一層有効に用いる方法を研究し、教育効果の教育心理学的・認知心理学的分析を行いつつ、法創造教育方法を開発する。 4.法創造教育支援システムの開発 開発されるシステムは、関連する法的知識(法規、判例、学説および制約知識)を整理し、問題集や問答集を整備して、Web上および知識ベースに搭載する。本システムは、@法的仮説生成・検証システム、A法的論争システム、BE−Learningシステムからなる。@は新しい法ルールを仮説的に生成しそれを検証する法創造のシステムである。Aは法的論争をシミュレートするシステムであり、主張や判断の妥当性を吟味し、新しい着想を得るのに役立つ。BはWebを通じて双方向のコミュニケーションを実現し、学生の自発的創造的学習を支援する。 むすび 国内外とも、法創造の問題を、推論の構造やシステム上の実現に踏み込んで行った研究はなく、全く独創的なものである。本研究により、「法創造の科学」への道が開かれることになるであろう。 平成14年度までの研究経過 本研究は、平成14年度に採択され、各月に1度の割合で全体的な研究会を開催している。その研究会において、各研究分担者の研究経過が報告されている。 平成14年9月1日〜10日に、吉野・加賀山・坂本・執行・櫻井が、米国ロー・スクールにおける教育の現地調査を実施した。調査は、ピッツバーグ大学、ウィリアム&メアリー大学、シカゴ・ケント大学の各ロー・スクールで行われ、テープ録音、ビデオ撮影、現地速記などにより、実際の授業を記録するとともに、IT設備を含む授業環境、授業の運営の仕方、授業の雰囲気作り、教材の作成・準備の仕方、学生の予習・復習の取り組み方などについて詳細な調査を行った。記録したものについては、現地調査終了後、ただちに、テープ起こしを行い、日本語に翻訳し、教師と学生とのQ&Aの分析、教師による質問の意図の分析、ソクラティック・メソッドの技法の分析などを行っており、実際に授業を行った教師に照会しつつ、体系的な知見にまとめる段階にある。 ロー・スクールの教育調査と関連し、リーガル・リサーチ・アンド・ライティングの授業形態の調査を行うとともに、基本的な教科書の試訳を行って、教育内容を分析し、我が国の法学教育改革の方向づけにつながるシステム化に着手している。また、契約法の基本的な教科書を試訳し、英米法における法制度との相違点を明確にする分析を開始した。すでに、故意による不法行為について、興味深い知見が得られている。 ロー・スクール教育の現地調査の分析から得られた、教育方法についての知見の教育効果を評価するために、各研究分担者が、知見のそれぞれにつき、自らの属する大学の担当授業に実際に導入し、分析を行っている。授業全体をビデオ撮影し、教師の質問に対する学生の反応、学生の表情の変化などを評価している。現段階では、教師の質問の仕方をどうすればよいかがポイントとなっている。さらに、法的推論の構造についても、図解や論理プログラミングの形で、法学教育に導入し、学生の理解が進展する様子を履歴にとり、その法創造の過程をとらえる分析を進めている。 Webベースのシステム構築に向け、TV会議システムによる遠隔法学教育、遠隔模擬裁判の実験を行っている。法的論争システムの改良が順調に進んでおり、模擬裁判システムとして展開しつつあるが、これをTV会議システムで運用し、論争のパターンを見出そうとしている。 現在は、法科大学院創設の準備期間にあたり、出来合いのWeb技術を利用した法学教育システムが、いろいろなところで作られ出しているが、本研究は、そのような皮相的なシステムと異なり、法的推論を直接に対象とし、各メソッドの効果を科学的に取り入れた、「法創造」を支援するシステムを開発しようとしている。そのようなシステムのプロトタイプの設計が出来上がりつつある。 |
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