第8節 議論のつくりかた:「何を書けばよいか分からない」ときに

【この節で理解すべきこと】

  • 議論の作りかたには、枚挙、分類、定義、例示、時系列化、比較、因果関係、相関関係、仮説検証などのパタンがある
  • どのパタンを使うかを考えると、実用的なアウトラインができる
  • 比較こそ意味のある問題を立てる最良の道である
  • 既存の主張の対立点を議論すると、適切なトピックがかんたんに見つかる

 ここまでに述べたとおり、レポートをただの作文と区別するのは、そこに「帰責」と「論証」があるという点であり、論証とは自分の立てた「問い」に対して「論拠」にもとづいて「答え」を出す作業である。また出題に則して論拠や方法を絞りこんだ具体的な「問い」によって、何を議論するかは決まる。

 残る課題はどのように議論するかである1。へたな料理が食材を台なしにするように、まずい議論は論拠を台なしにする。論理がどれだけ前進し説得力を生むかは議論のしかた一つで決まる。

 議論のしかたに万能のスキルはないが、よく使われる議論のパタンはいくつかある。レポートは、個々のトピックをそれらのパタンのいずれかで論じたものの集まりと言える。こうした議論のパタンは、単一のパラグラフで完結するばあいも、いくつかのパラグラフで構成されるばあいもある。この節では、そうした議論のパタンのいくつかを、日本語のレポートによく見られるものを中心に紹介する。

 レポートをどう書いて良いかわからないという悩みのかなりの部分は、このパタンを身につけることで解決する。議論の組み立てに慣れるまでは、アウトラインを作るさいなどに、ここで紹介する議論のパタンを見直し、それぞれのトピックをどのパタンで論じるかを検討するとよいだろう。


1 パラグラフ・ライティングは、レポート全体の問題を見失わずに整理するコントロール技術であり、いわば議論の容器である。この節では議論の中身や論理そのもののパタンについて考える。