【コラムD】親問題と子問題

一見大きすぎる問題でも、そこに派生するより小さな問題を個々に論じて行けば、最後には論証できるばあいが多い。ここでは仮に、もとの大きな問いを「親問題」、そこに派生する小さな問いを「子問題」と呼んでおこう。
 たとえば温室効果ガスの発生源は何か(親問題)を考えるばあい、「二酸化炭素の発生源は何か」「メタンガスの発生源は何か」(子問題)‥とガスの種類ごとに分けて問わなければ意味のある議論はできない。さらにこのうち二酸化炭素の主な発生源は何かを考えるばあい、「発生源となる自然現象は何か」「発生源となる人間の活動は何か」(孫問題)‥とさらに議論を切り分けるべきかもしれない。
 このように子問題を内包する問いは、意味のある論証を生む可能性が高い。ただし親・子・孫というタテの関係と、兄弟関係にあたるヨコの関係をまぜこぜにしないことは、基本中の基本である。
 温室効果ガスの例とやや様子が異なるのが、つぎのような子問題のパタンである。
 たとえばイチゴがバラの一種であることを論証する(親問題)ばあい、「イチゴはキイチゴの一種である」「キイチゴはノバラの一種である」「ノバラはバラの一種である」というー連の主張(子問題)をもちいた論証が考えられる。
 温室効果ガスの例では子問題どうしが並列されるのに対し、イチゴの例ではひとつの主張が別の主張の前提となっており、子問題がいわば直列されているのがわかる。並列型は取りあげる子問題の順序や数が多少変わっても成り立つが、直列型では当然問いの順序も数もむやみに変えられない。また子問題のどれかひとつに間違った論証があったばあい、並列型では部分的に説得力が損なわれるだけだが、直列型のばあいは親問題の論証全体が崩れる。
 レポートの出題者がふたつ以上の問いに答えるよう求めるばあい、問いどうしが並列の関係にあるのか、直列の関係にあるのかを、まず正確につかむ必要がある。並列型のばあいでも、直列型のばあいでも、レポート全体の結論で答えるべき大きな問いを見すえて論じることが大切である。