レポート全体の書きだしにはいくつかのパタンがあるが、もっとも基本的なのは、「問い」(結論がその答えとなるレポートの課題)を示して書きだしとする形と「答え」(結論となる主張)を示して書きだしにする形のふたつである。このふたつは、謎(たとえば死体発見)で始まるミステリーと、真相(殺人シーン)で始まるミステリーに似ている。 このいずれかを示してイントロダクションとすることで、論拠を検討するまえに論証すべきものを示し、レポート全体で何を言おうとしているのかをハッキリさせることができる。これにより数学の証明問題のような論理的にごまかしのきかない枠組みを作るのである。この意味で、初心者はまずこのふたつの「型」を身につけなければならない。 「問い」で始めるのも「答え」で始めるのも一長一短だが、テーマや分野によってどちらかでなければならない、という一般的な決まりはない。 「問い」をイントロとするばあい、結論がそれに対応する「答え」になっていなければならない。この形の短所は、まとまりにくい結論のばあい、「問い」をいきなり自然な疑問文の形で示すことが難しい、という点である。一方、「○○について述べよ」というようなあいまいな出題のばあい、まず問題を絞り込んでから論証に取りかかれるメリットがある。さらにミステリーと同じく、「結論は何だろう」という関心で読者をレポートの終わりまで引っぱることができる。 「答え」をイントロとするばあい、結論は基本的にイントロと同内容となる。「問い」をひねりださなくてよいという点は、初心者にありかたいだろう。ただし自分がなぜこの問題を取り上げたかの説明が必要なレポートのばあい、唐突感を与えずに「答え」を先行させるのは難しい。また、結論がたんなるイントロの反復になるのはいかにも芸がなく、尻すぼみと見られないため手際のよい論証が求められる。ミステリーになぞらえれば、真犯人を第一章で知っている読者は、かえって謎解きの巧みさや意外性を求めるものである。 「問いイントロ」でも「答えイントロ」でも、論証部分の作業はさほど変わらない。つまり最後に一方を他方に書き換えるのは難しくないのである。
|