ここでは,地域ワイドでMIMを実践している自治体(13)に対して行った調査結果をもとに,MIMの効果と課題についてまとめました。
→ 報告書「地域ワイドでの多層指導モデルMIM の取組および汎用化」
MIMに関する実践における成果(自治体への調査結果より)
子どもの変容
- 多くの児童が興味・関心・意欲を持って取り組むことができ,習得することができた。
- 全校の児童がこれまでよりもことばに親しむことができた。
- 子どもたちが意欲的にMIMに取り組めた。動作化やゲームは有効であった。
- 読みが速くなってきた。
- 促音や長音を身体で表現するのは,どの子にとっても楽しみながらできる活動であった。
- 読み方,書き方のルールの理解がし易かった。
- ことば遊び(ゲーム)のような感覚でカードを使った学習に楽しく取り組めている。
- 宿題にも活用し,語彙が広がっている。
- 子どもたちの「読みの力」の向上に指導の成果が見られた。特に,国語の偏差値,読む力が向上している。
- クラスレポート(学級全員の子どもの得点傾向がわかる資料)の月別の結果を分析すると,1stステージの児童の割合が増え,2ndステージおよび3rdステージの割合が減少している。
- 教科書の音読につまずく児童がほとんどいなくなった。
- 教師の話や問題文の理解ができるようになってきた。
- 特殊音節に関する表記の間違えが圧倒的に少なくなった。
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小学校1学年担任からは特殊音節の定着が例年より早くなっている
特別な教育的ニーズのある子どもへの支援の充実
- 学習障害等により言葉の習得が遅れがちな子どもに対しても,全体指導の後,個別に動作化を交えながら指導することにより,読みの定着につながった。
- 通級指導学級において,学習面(読み書きを中心とした)のつまずきに関し,MIMによる取組の方法を導入することができた。
- 読み書きに課題のある児童を早期発見できるだけでなく,個別指導につなげることで定着を図ることができた。
特別な教育的ニーズのある子どもの早期把握の実現
- 読みに困難がある児童をすばやく把握でき,つまずきに対する支援が少しずつ進められた。
- 通常の学級における指導に関し,MIMによる客観的なアセスメント(MIM-PM)を実施することができた。
- MIM-PMを実施することにより,子どもたちの客観的なデータが得られ,どの子どもに,どんな個別指導が必要なのかが明らかになった。
- 通級指導教室で導入したが,特殊音節,なかでも拗音の中のどの文字が苦手なのかが把握でき,有効だった。
- 特別支援学級の児童や上学年の児童の実態把握に役立った。
学校の積極性
- MIMによる指導を行いたいという学校が現在実施中のモデル校以外にあり,各学校で自主的に取り組む学校も見られるようになった。
- 研修会後,市教委主導でなく,独自に「MIM」に取り組み始める学校がみられた。
- 対象となる1年生のみならず,他学年にも考えを導入する学校がみられた。
- MIM-PMの実施により,支援を要する児童の把握ができ,その詳細な課題や背景についてアセスメントしようとする学校が出てきている。
指導・支援の一貫性
- 保育所で取り組んでいるケースが見られてきている。
教員の意識,専門性の向上
- ひらがなの読み書きの習得の遅れや,特殊音節のルール理解に関するつまずきが,その後の読み書きの困難につながり,つまずきの早期発見,早期支援の必要性を市内教員が理解することができた。
- 教職員の意識が高まり,授業の工夫にもつながっている。
- 学習内容に合わせて,一斉・グループ・個の学習形態が組め,授業が単調にならず,児童が意欲的に取り組めた。
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TTで授業をすることで,テンポよく進められた。
校内支援体制の構築
- 小中学校管理職対象の研修会で,管理職のリーダーシップについての講話により,MIMの活用について学校全体での推進が図られた。
- 学力向上の視点から導入し,毎月のMIM-PMテストの結果について管理職ととも共有し,改善点について話し合いを持つことができた。
- 教育関係の諸機関の注目が学力向上に向けられていることもあり,研修会には管理職も一部ではあるが参加した。管理職が参加した学校では,MIM-PMテストの結果が良くなっていく傾向が見られ,参加した管理職も実感している。
- MIM-PMの実施により,支援を必要とする児童が明確になり,学級担任以外の教員も参加しての朝の学習や昼の時間の学習支援を始めた学校が出てきている。
自治体としての支援体制の構築
- 委員会内にある教育指導室が責任をもって指導する体制ができた。学校に対する指導と支援が組織的に行えるようになったことは大いなる前進である。
- 指導主事が担当校をもち,学校訪問しながら授業参観したり,MIM-PMの実施状況を把握し,必要な学校には指導と支援をすることができるようになった。
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2学期から作成される,2nd,3rdステージ指導対象の子どもへの有効な支援ツールである「個別の配慮計画」の活用も,指導主事を通して,徹底するように指導ができるようになった。
MIMに関する実践における課題(自治体への調査結果より)
校内支援体制
- 1年生の指導で取り入れたが,授業の工夫は個々の担任に任せていて,情報交換や共有して研究会を実施するなどができなかった。更なる管理職研修,MIMを校内で支える体制の強化を図っていく必要がある。
- どうしても「MIM=特殊音節」というイメージがあるので,小学校1年生だけが取り組めば良いという雰囲気がある。
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MIMを組織的,計画的,継続的に実践していくための校内支援体制を構築していく必要がある。
具体的な指導法
- 2ndステージ指導,3rdステージ指導の支援方法がつかめていない。
- 実施における時間・人的課題。
- MIMの教材(CD-ROM)の活用が不十分である。
- ICT等を活用した支援方法。
効果の検証
- 研究がしっかりされている指導方法なので,独自に効果の検証をしていないが,教員のモチベーションを高めていくためには,必要であると感じる。どの客観的手段を用いたらよいのか,比較検討をどうすればよいか悩んでいる。
アセスメントの活用
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MIM-PMの処理については,実施後,教育委員会が集計処理を行い,完了後,各学校に結果を配付するようにしている。しかし,市内の1年生のすべての得点入力を一人の職員で行っているため,速やかにアセスメント結果および個別の配慮計画を返送できていない。そのため,個別の配慮計画に沿った支援を開始するまでにタイムラグが生じてしまっている。各学校が各自で集計処理を行うことで即時支援ができるような方向が望ましい。
学級間および学校間の差
- 学級担任など,指導者による指導スキルの差が見られる。
- 実践(理解・取組状況,アセスメントの活用など)に学校間の差がある。どこまで引き上げられるか。
理解・啓発
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MIMの研修等の回数がまだ少なく,MIMの有効性について,教員への認知,理解が十分ではない。啓発に努め,有効性の認知度を高めたうえで,教員が自発的に取り組む姿勢を広めていく必要がある。
リーダー養成
- 自前でできる研修体制の構築を目指し,モデル校での指導者養成を図っていきたい。
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MIMの推進リーダー養成をどのようにしていくか。
自治体としての支援体制
- 実態調査,取組,アセスメント等,学力向上の視点でMIMの実践をいかに行っていくかを検討することが必要であると考える。教育委員会内での方針の決定が急務である。
- 校長,教頭のMIMの研修会参加を要請し,MIMを校内で支える体制の強化を図っていく必要がある。
- MIMに関するブロック協議会・ブロック研修会の開催。
- さらに支援を充実させるための関係機関との連携。
- 予算的措置。