MIM地域コーディネーターとしての役割

ここでは,飯塚市内全ての小学校でMIMを導入することになった立役者ともいうべき,飯塚市立飯塚小学校で通級指導教室の先生をしていらっしゃる杉本陽子先生の実践の一部をご紹介します。杉本先生が自校でMIMを実践されたのは平成18年度からになりますが,平成23年度からは飯塚市内22校全てにおいてMIMが導入されました。その際,市内の学校でMIMがすみやかに実践できるよう地域コーディネーターとしてご尽力されました。

ひとつの学校での実践から市内全体への実践へ 飯塚小学校 杉本陽子

数年前,一実践者としてはじめてMIMに取り組みました。

振り返ると,この間のさまざまな実践が,今の飯塚市全体の取り組み,市のMIMコーディネーターとしての役割につながっているように思えます。

例えば,校内では,これから読みにつまずきそうな子どもを早期に発見し,早い段階で支援を行うことで,つまずきを深刻化させずに済みました。

明らかに読みでつまずいている子どもがいたときには,アセスメントの客観的なデータをもとに心理検査の実施等へとつなぎ,保護者に入級の必要性を理解してもらうことで,私の担当するLD・ADHD通級指導教室への入級にスムーズにつながったりしていったりもしました。

MIMに取り組むようになって,1年生担任の先生方とアセスメントという共通の物差しで,子どもの読みの力について共通理解し,指導方法を一緒に考え,日々の指導に役立てていけるようにもなりました。

学校外では,飯塚小学校での実践の確かな手ごたえが,仲間を増やしたいという気持ちに変わり,やがて身近な友人に紹介したり,校内研修の講師として出向いた小学校で,MIMについて紹介をしていったりするようになりました。

こうして,当初,一人で始めたMIMの実践が,飯塚小の1年生の先生方とのチームでの実践になり,それが他校の先生方の実践へと広がり,今では市全体への取り組みへと広がっていきました。

具体的な活動

MIMコーディネーターとしての具体的は活動としては,

  • 市内でのMIM研修会の講師
  • 自校で行われるMIMの授業の公開
  • 自作の応用教材の開発と提供
  • 指導教材の貸し出し
  • 研修会に参加した先生方と共に教材の作成
  • 質問のための相談窓口
  • 各学校でのMIM校内研修会の講師

成果

  • アセスメントによって学習が組まれることの大切さを,1年生の担任の先生方に捉えてもらうことができたこと。
  • アセスメントに基づいた指導が市内全部の学校に根付き始めてきたこと 。
  • 担任だけの立場でなく,管理職の立場で取り組んできたこと,指導方法工夫改善教員の立場で取り組んで来たこと等,様々な立場で,今子どもにできることを探し,支援を充実させていること 。
  • 各学校の取り組みにも広がりが見られ,学校独自で作られた教材の紹介がなされるようになってきたこと 。
  • 市内全部の1年生担任が,MIMを学んでいる子どもたちについて話をする時,共通のスケールで話ができるようになってきていること 。
  • 子どもを見る目も,点数や赤や黄色のマーカーで一喜一憂していた時から,個々の子どもの伸びを比較し,それに応じた必要な手立てを探るようになってきたこと 。
  • MIMの結果を,MIMの指導だけでなく,日常の授業での配慮にまで結びつけてきていること 。

課題

  • 1年生終了時に,3rdステージだった子どもたちへのフォローについては,各学校からのニーズが高い。そこで,コーディネーターとして,この件に今後どうかかわっていくか。また,飯塚市全体として,この件について,どう支援体制を作っていくか。
  • MIMの実践のリーダー的存在であるコーディネーターをどう増やしていくか 。
  • 市内全部の学校で,同じようなレベルでMIMの実践がなされるようにするためには,どのような支援がさらに必要であるか 。