MIMの指導法・教材の内容

視覚化(特殊音節のルールの明確化)

特殊音節のルールを明確に提示することを目的に,文字に入る以前に,音のイメージを,視覚的に,より簡略化して捉えられるよう,記号で音の特徴を表すことにしました。具体的な流れを促音の指導を例に説明します。

まず,「ねこ」と「ねっこ」の絵を提示し(図7),音声と絵のマッチングを行います。次に,音に合わせて,記号(ドット)をおき,音声と視覚的手がかりとを一致させます。この際,初めは,「ねっこ」に対しても,ドットを2つのみおき,「ねこ」と同様にして提示します。ここで,子どもたちに音声とドットとの違いに気づかせ,「ねっこ」の真ん中のつまる音に対しては,小さいドットをおくことを提案します。


図7  促音の視覚化

また,拗音の指導においては,拗音三角シートを用います(図8)。これは,2つの音がどう混成して1音になり(読字の際に必要となる力),1音がどう分解されて2音になるのか(表記の際に必要となる力)を視覚的に理解することを目的にしています。


図8  拗音の視覚化

動作化(特殊音節のルールの明確化)

視覚化と同様,特殊音節のルールを明確に提示することを目的に動作化を取り入れています。動作化することにより,目に見えない音の特徴を,具現化することができます。また,このように,明確にルールを示すこと,さらには,特に道具を使わず,自分の体を使ってルールの確認ができるようにしたことで,時や場所を選ばず,子ども自身がルールの確認ができることも意図しています。具体的な流れを促音の指導を例に示します。

「ねこ」と「ねっこ」について,ドットを用いながら,音の特徴を視覚化した後,清音,濁音・半濁音については,手を1度たたき,小さいドットのところは,両手をグーに握り音を出さないようにします(図9)。リズムに合わせて動作化できるようにし,最終的に,動作と文字とを対応させます。


図9  促音の動作化

ことば絵カード(アセスメントと指導とのリンク)

MIMを機能させるために必要不可欠なのが,MIM-PM(めざせよみめいじん)というアセスメントです。2つのテストから成り,各1分の計2分で実施します。1分という短い時間なので,用意された全35問(1つの下位検査につき35問ずつ)を全て解くことは難しいかもしれません。そこで,やり残した問題への再挑戦や,自分の解答の確かめを実現するため,ことば絵カード(図10)を作成しました。

これは,表面がMIM-PMのテスト①に対応しており,3つの選択肢の中から絵に合う語を選択する課題になっています。その答えをあえて番号で示さず,裏面に正答が含まれた短文を示すことで,子どもが再度,正答の語を自分で見つけて確認できるようになっています。また,語から文へつなげられるよう,文は,絵の内容を端的に表した内容にし,暗唱できるほどの長さにしました。さらには,表面の語の意味も裏面に示しています。表記のみでなく,語の意味についても獲得することをめざしたためです。

これらは,1st,2nd,3rdステージと,異なるステージ指導においても,その時々のニーズに合わせ,多様に用いることができます(例:表面を使っての3択問題,裏面の意味を聞いてそれが何かを考える課題等)。また,授業や指導時間以外であっても,教室内に置いておき,休み時間等,子どもが自由に手にし,友だちと問題を出し合ったりして遊べるようになっています。



図10  MIMことば絵カード(表面(左)と裏面(右))

ちょっとかわったよみかたのかきとりしゅう(スモールステップで着実な表記の習得)

この教材は,正確で素速い読みから,正しい表記へとつなげていくことをねらっています。

このかきとりしゅうでは,特殊音節の表記の特徴を視覚化した手がかりと,文字,絵とが対応しています。また,1つの表記に対して4段階のプリントが用意してあります。まずはなぞることから始め,次に特殊音節の部分のみを記入,続いて,視覚化の手がかりを用いて全てを記入,最後には視覚化の手がかりなく,全てを記入するというように,スモールステップ化されています(図11)。

授業時間内でも,また宿題としてでも取り組めるようになっており,一人で取り組んだ場合でも,わからないときには,前ページを見ながら確認して取り組めるようになっています。(逆に,習得間近の子どもには最終ステップの形式のみを実施してもよいことになります)。


図11 ちょっとかわったよみかたのかきとりしゅう

はやくちことば(日常的に既習内容に触れる機会を豊富に用意)

学習したことを日常の場面と関連づけること,さらには,日常的に触れる機会を増やすことをめざし,身近に手に取れるもの,掲示物等の作成・活用を考えています。そこで,特殊音節の要素別に,はやくちことばを作成し,文集を作ったり(図12),それをポスター版(図13)にしたりして掲示できるようにしています。その際には,子どものモティべーションが高められるよう,また,はやくちことばの内容をイメージできるよう,絵もつけてあります。早口で3回続けて言えるよう促し,リズムに合わせて唱えること,ゲーム性をもたせることで,楽しんで特殊音節の入った語を習得できるようにしています。

 図12画像
図12  MIMはやくちことばしゅう(文庫版)

図13画像
図13 MIMはやくちことば(ポスター版)

ちょっとプリント(指導の多層化を実現)

このプリント(図14)も,アセスメントであるMIM-PM(めざせよみめいじん)と連動しています。ことば絵カードと同様,MIM-PMの復習として用いることができること,1枚に掲載されている問題数が少ないことから,隙間時間などで柔軟に活用できます。また,分量的にも子どもにとって負担の少ないものになっています。

このちょっとプリントは,その時々のニーズ,それぞれの子どものニーズに合わせ,多様に用いることができます。例えば,通常の学級の一斉指導の中で用いる場合,未習得の子どもは,このような基礎的な問題をしっかりと解いていくことでルールの獲得をめざします。早く終わってしまった子どもは,余白に,問題作成の意図を理解した上で自分も問題を作成するといった想像(創造)力を働かせる課題に挑むこともできるでしょう。こうして指導の多層化が実現できるようになっていきます。


図14  MIMはやくちことばしゅう(文庫版)

多層指導モデルMIMにおける読み書きに関するゲーム集(指導の多層化を実現)

ゲーム性のある課題を通じ,特殊音節等を含むことばの学習が進められるようになっています。学習の導入や定着など,学習の目的に合わせて用いることができます。それぞれの課題では,MIMにおける各ステージ指導での具体的な用い方についても紹介されています(図15)。



図15  多層指導モデルMIMにおける読み書きに関するゲーム集の中の一例