第2節 推敲の目のつけどころ:叙述の注意点

【この節で理解すぺきこと】

  • 書き上げたままの原稿は不備だらけであり、推敲は絶対に必要である
  • 一晩置いて音読するー文章の不備は書き上げた直後には見つからない
  • 推敲の基本はことばを削ることであるーより短い文章はより良い
  • 簡潔さを損なう表現やことばの重複など、推敲には注目すべきパタンがある

 よほど優れた書き手でないかぎり、書き上げたまま手を入れていない文章を他人に読ませるのは、避けるべきである。書き上げた文章を練りなおし、不備を取り除くことを推敲すいこうという1書き手のレベルを問わず、推敲は確実に文章を改善する。

 書きっぱなしの原稿には必ずくだらない入力や変換のミスがある。また、似た主張の繰り返し、くどい言い回し、曖昧な表現、意図を現しきらないことば、唐突な話題転換などのためたどたどしく、読者にとって分かりにくい。とくに目いっぱい頭をひねったレポートのばあい、書いたままでは整理不足で、しばしば自分の意図に反し、読み手にも不親切である。たとえ骨組みとなる論証が優れていても、こうした不備で、信用や評価を逃がし、悪くすると失礼な人物と見られかねない。

 文章の不備を見つけるさい最も役立つのはフレッシュな目であり、一晩休んでから推敲することはつねに賢明である。同じ理由から、音読して間違いや流れの悪い箇所を見つけるのも効果が高い。自分が書いたばかりの文章のばあい、頭の中に残った思い込みが邪魔をして、なかなか問題点が見えないからである。


1 本来、「推敲」とは言葉を選んで一度書いた文をよりよく手直しすること、「校正」とは手書き原稿と印刷用の版面(もともとは原本と写本)を校合(突き合わせ)して訂正することだが、両者の区別は現在かなり曖味になっている。