【コラムJ】文章の余韻に頼らない

 レポートで顔文字を見たことはさすがにまだないが、最近増えたもので印象上これに近いのが、リーダー「・・・」で終わる文である。引用のなかで省略箇所を示すばあいを除き【→第6節・1】、レポートでは用いてはならない。学術論文では言うべきことはハッキリ言語化すべきであり、文章のあいまいな余韻に頼るべきではないからである。センテンスは句点で完結させなければならない。
 おなじ理由から、体言止め(名詞で終わるセンテンス)もなるべく用いない。慣れない書き手の体言止めは、主張をあいまいにし、文章のリズムをさまたげ、幼稚な印象を与える。ただの非文(文法的にあやまった文)と見なされる恐れもある。あくまでも主語と呼応する動詞でセンテンスを締めくくるのが、日本語叙述の基本である。
 また、「○○と認めてよいのだろうか。」などという修辞疑問文もレポートには用いない。ことばにならない余韻に頼るという点で、これもリーダーで終わる文に通ずるものがある。きちんとした理由のある主張を、こうしたかたちで示す必然性はない。○○とは認められないというのが筆者の主張ならば、「○○とは認められない。」と、いまの段階では○○と認めてよいか判断できないのなら「○○とは即断できない。」などと、○○と認めてよいか判断を下したくないのなら、理由を示したうえで「○○との判断を留保したい。」などと、ハッキリことばにすべきである。