第6節 引用の示し方とその消化

【この節で理解すべきこと】

  • 他人のことばと自分のことばは、カギ括弧や段落引用をもちいて区別する
  • 直接引用はもちろん、パラフレーズでも出典を表記する
  • 直接引用では一点一画まで手を加えずそのまま再現する
  • 引用元のオリジナリティの高いことばに絞り、手短かにメリハリをつけ引用する
  • パラフレーズや引用は、書き手独自の分析や批判を加えるためのものである

 第1節で述べたとおり、レポート・論文には、(1)問題を立て、(2)客観的な論拠をあげ、(3)答えを示す作業が欠かせない。結論は同じでも、論拠がなければ主観的な感想や憶測と見なされる。主張に「誰が考えてもこうならぎるをえない」という説得カをそなえるには、文献・資料から説得力のある論拠を引用し、消化・活用することが大切である。

 レポート・諭文に他人の文を引用するばあい大事なのは、第5節でも述べたとおり、どこからどこまでが他人のことばなのかを明示することである。繰りかえすが、他人の研究成果やアイディアを断りなく自分の名前で発表すれば剽窃ひょうせつ(盗用)となり、他人のことばをでっち上げれば捏造ねつぞうとなる。こうした不正行為を避けるために、前節で説明した出典示の方法と、この節で学ぶ他人と自分のことばの線引きを身につけなければならない。

 ルールを守って引用すれば、自分のレポートや論文に、これまでに専門家の手で明らかにされたことを取り入れられる。これにより、一見手に余るような大きな問題を、個人の好き嫌いや思い込みを超えたレペルで議論できる。

 もちろん先人の学説を取り上げるのは、そこに自分なりの分析・評価・批判を加えるためである。大きく捉えれば、レポートや論文は、何世代もの人びとが築いてきた大きな建物に、たとえ小さくても自分の手であらたな部分を付け加えるしごとと言える。その道の権威のことばをオウム返しにするだけの書き手は、虎の威を借る狐である。

 引用は大別すると、他人のことばをそのまま借りる直接引用(quote)と、他人のアイディアだけを借りて自分のことばで示すパラフレーズ(paraphrase)に分かれる。借りた範囲の示し方はそれぞれ徴妙に異なるが、いつ誰がどこで述べたかを示きなけれぱならないということは、言うまでもなく同じである。