1.注の役割と位置

 本文に書くと流れを悪くし、読者を枝道に迷いこませる内容を切り離し、本文の流れとは別に示したものを「注」あるいは「注釈」という。中身は完結した短い情報提供で,ふつう注をつける箇所の本文で論じた内容への補足などである。

a.注の2つの役割

(1)本文の語句や内容の補足説明:レポートの問題設定や論証からやや離れた関連情報、研究上の目配リ、関連人物、術語などの事典的説明などを示す。

(2)出典(引用元)の明示:自分の論文のなかで他人の文章や表現、アイディアを借りる(引用する)ばあいは、自分自身のことばと区別し、かならず誰が・いつ・何という文献のどのページで述べたか、という引用元の情報を明示する。これも本文にそのまま置くと流れを滞らせるので、レポートや論文では注に置く。引用元は自分の主張を裏づける証拠である。自然科学における「迫試」と同じように、出典表示を見た人が、誰でも確実にその文献を探し出し、引用箇所にたどり着けるようにしなければならない。【→第1節 3】

b.注を置く場所

(1)後注こうちゅう本文中の注をつける語句や文の直後に注番号(章または巻ごとの通し番号)だけを記し,注の内容そのものは本文(章または巻)の終わりに集めて示す。注番号は、このハンドプックでここまでに使ってきたように、注をつける本文中の語句や文の右肩にこのような→ 99 小さな数字で示す。後注は、位置により「章末注」または「巻末注」などとも呼ぶ。

(2)脚注本文中には後注のばあいと同じ要領で注番号だけ記し、注番号のあるぺージの下部に、このページにあるような横線などで区切ったスペースを設け、注の内容そのものはそこに示す。注が本文と同じページ上で確認でき、読者に親切なスタイルであるため、近年の横書きのレポートではもっとも一般的である。ワードプロセッサの注機能により、注の連番づけや脚注レイアウトが自動化され、以前より手間のかからないスタイルとなった。レポートや論文ではふつう後注か脚注のいずれか一方とし、両者を混ぜて使わない。「アカデミックリテラシー1」では脚注に統一する

(3)本文中でのカッコ注記注番号を用いず、丸カッコにはさんで注を付ける文や語旬の直後に示す(厳密にはこのスタイルの注記は「注」と呼ばない)。後述の例のように、本文中でのカッコ注記は句読点の内側(左側)に置く。句読点の外側(右側)に置くスタイルもあるが、見づらく一般的ではなくなりつつあるので,「アカデミックリテラシー1」では句読点の内側(左側)に統一する。


1 この注もふくめ本書は「脚注」形式である。Wordなどのワードプロセッサでは、本文の任意の位置にカーソルを置き、脚注を押入する操作をすると、そこに上付き文字で適切な注番号が記され、自動的にそのページの下部に脚注用のスペースが区切られ、そこにも同じ番号が記され、すぐに注そのものを書きこめる状態になる。